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『かげきしょうじょ!!』 8巻 [コミック]

いつか歌劇団のトップになることを目指す紅華音楽学校の予科生、渡辺さらさと、
その仲間たちの青春を描く物語。

紅華音楽学校100期生の「強く!」「正しく!」「美しく!」という掛け声が好きです。
そこは「清く正しく美しく」じゃないんだ、というところと、気合の入りようが気持ち良い。

この巻の出色は、愛ちゃんのティボルト。
国民的アイドルグループ・JPXの元メンバーで、
本人も周囲も奈良田愛=娘役とナチュラルに思っていたところにこのティボルト。
山田さんにジュリエット役で負けたことが、この展開につながってくるのか。
瞳の昏さ、虚ろに抜けていく表情。
さらさにはなれないけれど、愛ちゃんの可憐な容姿であの演技という迫力があった。

奈良田愛のティボルトは、渡辺さらさをよく見ていたからこそできた業なので、最初にさらさが冬組トップ・里見星のティボルトをトレースして安道先生にNGを出されたように、愛ちゃんがあの演技でお客さまに受けちゃうのは彼女自身のために良くない気がして、むしろあの場面で台詞を噛んでくれて安心した。
新人公演当日に喉を涸らしちゃう紗和委員長も、台詞を噛んじゃう愛ちゃんも、まだまだ経験の浅い予科生だもん。いきなりすべてが上手くは行かないよね。
でも、きっと次の可能性につながったと思う。
JPXにいた頃は知らなかった気持ちで舞台に上がって、愛ちゃんは少しずつどんどん変わっていく。

さらさは、最初から芯が通って揺らぎないように見えていたけど、家族のことを思って動揺するのが今の彼女の美点なんだな。今回はおじいちゃんの入院が軽いもので済んで良かったけど、いつか本当に、舞台を取るか家族を取るか選択しなきゃいけない日が来るかもしれない。
そちらの道へ一歩、進む話だった。
さらさの世界は、歌劇団と歌舞伎の二つが交差しながら広がっていて、その両方に触れながらどこまで行くのか楽しみにしてる。

それにしてもこの漫画は女の子を描くのが上手くて、いつもやられてしまう。
7巻の聖先輩も、山田さんも、紗和委員長も、薫ちゃんも、里見さんも、エピソードを読んじゃうと思い入れを持たずにいられない。
たまたま主人公がさらさだから脇役に回っているけど、紅華に合格した彼女たちは、本来みんな主役を張れる魅力のある子たちなんだなあ。
聖先輩の「あなた達の文化祭は来年が本番だし、舞台は再来年もその先もずっと続くの!」という台詞にヒリヒリする。
ひとりひとりの物語に共感する部分があって引っ張られる。

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