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『ナイチンゲールの沈黙』 [読書]

『チーム・バチスタの栄光』から始まる東城大学医学部付属病院、愚痴外来シリーズの2作目。
1作目から読むべきだと思うけど、『チーム・バチスタの栄光』が
近くの書店にも図書館にも置いてなかったのでお許しください。

今回は東城大学医学部付属病院、オレンジ新棟の2階にある小児科病棟の話。
読み始めてから少しして、本作が『ジェネラル・ルージュの凱旋』と
同時進行の別事件を扱っていることに気付いてざわっとした。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』と双子の関係だったのね。
こちらが姉です。
どおりで『凱旋』では登場人物の説明が短めだったり、意味がよくわからなかったりしたはずだ。
出版された順序と逆に読んでいる自分が悪い。

『沈黙』の端々にも『凱旋』のカケラがあって、あらかじめ2作セットで
世に送り出すことを前提とした書き方がされていると思う。
そして、ここにもAiが登場する。
というか、『チーム・バチスタの栄光』にもAiが登場するみたいで、なるほど作者の姿勢は一貫している。
同時進行で2つの事件に振り回された田口先生はお疲れさま。

今回のテーマは小児科医療と共感覚。
どこまでがフィクションか判断が付かない自分の知識の無さでは何も言えないのだけど、
登場人物と同じ病の人がいる現実、従事している人がいる現実、
親の関わり方も様々だし、医療費を払えない親子だっているし、医師や看護師もひとりの勤め人だ。

水落冴子と浜田小夜の歌に関する能力は、
ミステリーの小道具としては許容されにくいかもしれないけど、それほどファンタジーとも思わなかった。
共感覚を脳の機能から医学的に説明するとこうなるのかーって。
自分が共感覚の概念を最初に知ったのがFFTのサウンドテストのコメント、
「色とりどりの歯車」のように見え、支配している色は緑と黒……」のくだり。
それからクロッシングという言葉を意識したのが『マルドゥック・ヴェロシティ』。
音楽関係の本でもときどき見かけたことがある。

ただ、看護師が患者の中学生に実の父親を腑分けするように提案する感覚はどうかなあ。
名案に思えたとしても、いきなり心理的なハードルを越え過ぎではないか。
小夜の抱えている闇は深くて、この本で描かれていない部分がまだありそうな感じ。

ハイパーマン・バッカスとシトロン星人については、物語の本筋とはそれほど関係ない(はず)
なのに設定の掘り下げ方がただごとではなく、語り口が異様にノリノリ。
作者の人になにかあったのか。
白鳥さんが水を得た魚のように生き生きと輝いていた。
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