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『シャイロックの子供たち』 [読書]

池井戸潤さんの得意分野、銀行ミステリの短編集。
今回の小説は舞台がずっと同じ場所、東京第一銀行長原支店なのが特徴で、
章ごとに語り手を代えての短編オムニバス。全体を通して一つのミステリになっている。

池井戸さんはほんとうに、社会人の焦燥を描くのがうまい。
組織の中での凋落や秘密の露見、人間関係の破綻など、致命的な失敗を目の前にして、
なんとか防ごう、取り繕おうとする人たちの焦りや必死さにハラハラする。
人生こんなに落とし穴だらけで大丈夫なんだろうか。
少しの油断やわずかなミスが人生の転落につながる、行員として生きていくことは難しくおそろしい。
創作の世界とわかっていてもたいへんな職場だ。
いつでも破滅への入り口は開いているから気を付けなさい、という警告だろうか。

あと、池井戸さんの小説世界はゆるくつながっているようで、
ある小説に登場する架空の銀行が他の作品でもちらりと出てきたりするので、
登場人物の誰がどの銀行に属しているか、相関図を作ったら楽しそうだと思いました。

ちょっとネタバレになるけど、この本の第二話に出てくる「はるな銀行」って、『空飛ぶタイヤ』の
主人公の会社、赤松運送がピンチのときに新しく融資してくれた銀行だよね。
『空飛ぶタイヤ』の第五章に、はるな銀行について
「一時国有化された弱小都市銀行というイメージしか正直無い」とあるので、
時系列は『シャイロック』→『空飛ぶタイヤ』かな。
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