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『新装版 不祥事』 [読書]

最近、池井戸潤さんの本を読み始め、
『鉄の骨』『銀行総務特命』『仇敵』『空飛ぶタイヤ』と進んで、新装版『不祥事』まで来ました。

『不祥事』は、『銀行総務特命』や『仇敵』と同じように、銀行が舞台のミステリで連続した短編集。
主人公の花咲舞と上司の相馬調査役の役割は、
本部から問題を抱える支店に出向いて事務処理の至らない部分を指導し、解決に導くこと。
現場の弱き者の声を聞き、倫理の欠如や不正をただす姿は、水戸の御老侯を連想する。

銀行内部にはそんな花咲舞と相馬調査役の行動を目障りに思う勢力もあり、
評価や人事に振り回される行員もいるけど、花咲舞の存在が風穴を開けていた。

主人公でトラブルシューターの花咲舞は、
池井戸さんの銀行ミステリ短編集の中ではアクの強い方だと思う。
面倒見が良くて鉄火肌で、仕事も早いが腹の立つ相手に手が出るのも早い、すてきなおねえさん。
――とはいえプライベートの描写はないし、わりとオーソドックスなキャラクターだと思うんだけど、
しかし、「鋼鉄のワイヤのような視線」(p349)というのは素敵だな。
行内の敵対勢力にいる児玉さんが、花咲舞にそういう印象を持つのがロマン。
タフな信念と強さ、しなやかさもあって、ビジネス社会の理想の戦乙女みたいな。

上記の印象を抱いた児玉さんが派閥を越えて花咲舞の価値を認めてくれたら
わたしのツボでごちそうさまでしたありがとうございますの心躍る展開なんだが、
池井戸さんはそこまでサービスせずにさらりと物語を締めるのであった。
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