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『街の灯』 [読書]

時は昭和7年頃、ヒロインは女学校に通う財閥系列商事会社のお嬢様。
主人公の暮らす環境は仰々しいですが、ミステリとしては「日常の謎」もので、
探偵役は彼女とその運転手で分け合っています。
謎解きの材料を示すのが運転手の、筋道を解説するのがお嬢様の役割。
女の子と女性運転手の主従ものとして読んでも楽しいんじゃないかな。

父親の教育方針が進歩的という設定なので、令嬢といっても視野の狭い驕慢さはなく、
お付きの運転手兼お護り役に「――存分になさい」と命じるところなどは、
きりりとして格好良いです。ときめきます。
ただ作者が北村薫なので、お嬢様も多少理屈っぽい(笑)
彼女視点の一人称で書かれているので、
昭和初期の世相や風俗が見てきたように大盤振る舞いされています。

北村薫は模範的だと何度か思いました。
『街の灯』には中編が3話収録されているのですが、
ヒロインが経験の一つ一つから何かを得て成長しちゃうから、時を止めておけない。
そのあたりは『空飛ぶ馬』の流れにも似てますね。

この本は、広い知識と観察力と体術の心得を持つ女性運転手、別宮さん(通称ベッキーさん)
そのものが魅力的な謎なので、シリーズに続きがあるなら読みたいです。


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