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『植物記』 [読書]

日本有数の植物学者、牧野富太郎の自選エッセイ集。
筑摩書房のちくま学芸文庫から復刊された文庫本を読んでいるんだけど、
牧野先生の文章の調子が意外と気さくというか伝法というか、
さすが坂本龍馬と同郷と申しますか、べらんめえで親しみがわきます。
高知県立牧野植物園で見た植物のスケッチはあんなに丁寧で繊細で正確だったのに。

この本を読んで100人が100人植物の知識を身につけることが可能どうかはさておき、
牧野さんのお人柄に触れることができて親しみが湧きました。
さすが長州藩出身者と言ったら、レッテル貼りみたいで怒られるよなと思っていたら、
ご本人が「私は土佐の生まれ丈けあって、その鼻息がすこぶる荒らかった」と書いていた。
(250ページ「私と大学」の項) 豪気な方ですね。

博学で、さまざまな竹の花の解説などはすみません難し過ぎます。
万葉集や古典の植物誌を引いて、博覧強記の知識を次々と披露してくださる。
これだけの引き出しがあるというのは、どれだけ若い頃から触れていたのかな。
植物学史の裏話的なエピソードも山盛り、本人が言ってることなのでどこまで信じるかはあなた次第。

椿はツバキではない。蓬はヨモギではない。桜は桜桃のことであるなどなど。
初版発行から50年の間に生物学上の発見があって牧野先生の主張にまちがいが
見つかった部分もあり(だから100%鵜呑みにできない)、50年経っても世の中が牧野さんの主張に
染まらなかった部分もあり、楓はカエデ科のカエデではなくマンサク科のフウであると言っても、
広く人口に膾炙してしまった今さら、どうしようもないよねえ。

納得できないことがあれば、時として先人も先輩もけちょんけちょんであり、
そういう強気な人じゃないとここまでの結果は残せないのかもしれないな。
それを自選エッセイに再録しちゃうところがまた無邪気で大胆。
熱海サクラの名所化計画は、カワヅザクラでほぼ実現しましたね。

スエコザサにその名がある奥様のことを「恋女房」と表現しているのが可愛げであり、
しかしながら、そんな程度の労りでは済まないほどの苦労を掛けてると思う。
年表から換算すると、富太郎26歳のとき奥様14歳くらいと結婚してるじゃないですか。

植物に親しむ機会になれば儲け物くらいの気持ちで流し読みして、楽しかったので満足です。
自分がもう少し知識を身につけて、詳しくなったらまた読もう。
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