『禁じられた楽園』 [読書]
黒い恩田陸が炸裂していました。
いかに気持ちの悪いものを書くか、暗い情熱が燃えてるなあ。
一生懸命さが伝わってきて反応に困る。
趣味のいいテーマパークのアトラクションに翻弄される話だと思えば滑稽だけど、
トラウマを発端とした内容なので、その情熱が微笑ましいかどうかは微妙。
読者の不安感を煽らずにいられない特有の展開は健在でした。
『常野物語』のワンエピソードといっても通用しそうだ。
それとも、『球形の季節』の大学生・社会人版かな。香織さんがみのりちゃんで。
みのりと違って、香織は害を与える相手と対決するけど、属性は近いと思う。
どうして香織にそれが可能なのか、はそもそも恩田さんがうっちゃっているので考えても仕方ない。
恩田陸に筋の通った起承転結を期待してはいけない。
パニックホラー映画のように、雰囲気を楽しむものです。
恩田陸の作品の問題は、その作品がホラーかミステリーかファンタジーか、
読み終わるまでわからないことだけど、
作者本人も自分の書くものがどこに落ち着くか見当が付いてなくて、
とりあえず連載しているうちに形になるだろうと考えて筆を進めているように思えてならないです。
客観的で現実感のある日常社会を描写しておいて、そこから陸続きで超常現象が始まるから
読者はギャップに戸惑うんだけど、それを天然でやっている節がある。
対談集『読書会』で本人が、本屋大賞を取って青春映画にもなった『夜のピクニック』について、
もっと陰湿な話になるはずだったのに爽やかなオチになって驚いたという旨のことを言っていて、
やっぱりか!と思いました。
夜ピクを読んだとき、恩田陸も大人になって少しは毒気が抜けたのかなと思ったけど、
むしろ、こうして毒気を薄めれば世間ウケするものが書けるのにと思ったけど、
それを狙ってやるのは難しそうです。
風呂敷をたたもうとする姿勢は良くて、基本的に一作ごとに完結しているのは助かる。
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