『マルドゥック・ヴェロシティ』 3巻 [読書]
結局、最後まで戦っていました。
そもそものテーマがボイルドの"虚無"なので仕方ないけど、
『マルドゥック・スクランブル』ほどのカタルシスは得られなかったです。
暴力と陰謀の連続で気の休まるときがなく、もうちょっと息継ぎの場所があればなあ。
それでもこの2週間、リアルタイムで発行を追いかけることができて楽しかった。
予想していたよりはひどい結末じゃなかったし、あらかじめ形の決まっている
結末に向かって辻褄を合わせつつ、よく話を膨らませていると思った。
こういう話を発行できるところにハヤカワ文庫の底力を感じます。
……本当に、早川書房の懐の広さにはときどき感服する。
さすが、『ロミオとロミオは永遠に』や『アマチャ・ズルチャ』を世に送り出した出版社だ。
全3巻を読んだ後では、バロットの扱いがまともに見えました。
これが"少女"と"錆びた銃"の属性の違いか。
『ヴェロシティ』の登場人物に比べれば、まだ恵まれた役回りだった。
ウフコックはこの後、バロットというパートナーに出会えてよかったね。
最後の方では、『マルドゥック・スクランブル』に繋がる話を書いていたはずなのに、
いつのまにか別のところに着地していた、という印象を受けました。
真相を種明かしするタイミングで、張っておいた伏線を回収したら
別の方向にスライドして『月の裏側』に辿り着いちゃったという感じ。
途中から話の規模が広がって、著者が冲方丁から恩田陸に変わったような違和感が。
これだと、最終的な決着のためには、もう一区切り分のエピソードが必要じゃないか?
スライドしたまま投げっぱなしにしても完結するけど、
このシリーズを続けようと思ったら、まだ充分続けられそうだ。
ひとまず『マルドゥック・スクランブル』を再読して、シザーズの影を探してきます。
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